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朱花の月

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河瀬監督の最新作。
奈良の飛鳥が舞台。

一人の女と、その女を愛する二人の男。
染色家の加代子と、地元PR誌の編集者の哲也とは長年連れ添う恋人だ。
そして、加代子の同級生の木工作家の拓末。
加代子の心は今、拓末にある。

男女の三角関係の危うい気持ちの揺れを、奈良飛鳥の自然を背景に淡々と描かれている。
私が印象に残っているのが、二人の男が加代子の為に料理を作るシーンだ。

冒頭では哲也が、地元の新鮮野菜を使ってサラダを作る。瑞々しく美味しそうなサラダ。
あれこれ野菜の話をする嬉しそうな哲也だが、加代子はただうなづくだけ。
「おいしい。」とポツリ言う。
そう、加代子の心は拓末にあるのだ。
傍らには哲也が可愛がっているカナリア。
小さなかごに入れられ、足輪を付けられたその姿は、何だか悲しげに思える。

そして場面は加代子と拓末が二人でこっそり会うシーン。
神社で御参りをし、そして二人で拓末の工房へ。
嬉しそうに笑う二人。拓末は手際よくザクザクと野菜を切り、炒め、
そしてあっという間に美味しそうな料理を完成させる。
「美味しい、美味しい。」とほおばる加代子は本当に幸せそうなのだ。
工房の壁にはツバメが巣作りをしている。
新しく生まれる生命の為に、巣作りをするツバメには未来がある。
哲也のカナリアとは違うのだ。

料理と鳥・・・。

対象的なシーン。

河瀬監督は、一人の女の心情をうまく対象的に表現してるなあと思った。

静かな流れの中で、ストーリーは少しずつ思わぬ方向に展開していく。

お話はここまでにしておきます。

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by asianmable | 2011-09-19 08:08 | えいが